特養とサ高住の違いを徹底比較|費用・入居条件・サービスを一覧表で解説
特別養護老人ホーム(特養)の基本情報
「特養」と呼ばれる特別養護老人ホームは、老人福祉法上の名前が「特別養護老人ホーム」、介護保険法上の名前が「介護老人福祉施設」です。同じ建物を、2つの法律がそれぞれの目的で呼び分けている、と考えると分かりやすくなります。
運営主体を「社会福祉法人や自治体が中心」と説明されることが多いのですが、これは慣行ではなく法律がそう決めていることです。老人福祉法第15条は、特別養護老人ホームを設置できる者を限定的に列挙しており、株式会社などの営利法人はこの列挙に入っていません。
介護保険法第8条第27項「この法律において『介護老人福祉施設』とは、老人福祉法第二十条の五に規定する特別養護老人ホーム(入所定員が三十人以上であるものに限る。以下この項において同じ。)であつて、当該特別養護老人ホームに入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことを目的とする施設をいい……」
老人福祉法第15条第3項「市町村及び地方独立行政法人……は、厚生労働省令の定めるところにより、あらかじめ、厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に届け出て、養護老人ホーム又は特別養護老人ホームを設置することができる。」/同条第4項「社会福祉法人は、厚生労働省令の定めるところにより、都道府県知事の認可を受けて、養護老人ホーム又は特別養護老人ホームを設置することができる。」
介護保険法第42条の2第1項「市町村は、要介護被保険者が、当該市町村……の長が指定する者(以下「指定地域密着型サービス事業者」という。)から当該指定に係る地域密着型サービス事業を行う事業所により行われる地域密着型サービス……を受けたときは、当該要介護被保険者に対し、……地域密着型介護サービス費を支給する。」
出典:e-Gov法令検索「老人福祉法」(昭和三十八年法律第百三十三号)第15条・第20条の5(https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000133)/「介護保険法」(平成九年法律第百二十三号)第8条・第42条の2(https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123)/いずれも2026年8月12日確認
特養の主な特徴(条文で確認できるもの)
パンフレットに並ぶ「24時間対応」「看護師がいます」といった説明のうち、どこまでが法令上の義務で、どこからが施設ごとの努力なのかを分けておくと、見学のときに聞くべきことがはっきりします。指定介護老人福祉施設の人員・設備・運営の基準は、厚生省令第39号が定めています。
- 介護職員・看護職員の総数:常勤換算で入所者3人につき1人以上(第2条第1項第3号イ)
- 看護職員の数:入所者50人超130人以下なら常勤換算3人以上(同号ロ(3))。うち1人以上は常勤(同条第6項)
- 機能訓練指導員・栄養士(または管理栄養士)・介護支援専門員:それぞれ1以上(同条第1項第4号〜第6号)
- 入浴または清しき:1週間に2回以上(第13条第2項)
- 夜間を含む介護職員の配置:常時1人以上の常勤の介護職員を介護に従事させる(第13条第7項)
- 協力医療機関:急変時の相談・診療・入院受入れの体制を確保した医療機関をあらかじめ定める(第28条第1項)
出典:e-Gov法令検索「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」(平成十一年厚生省令第三十九号)第2条・第13条・第28条(https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100039)/2026年8月12日確認
特養の種類:ユニット型と従来型
特養の居室は、ユニット型(少人数のグループごとに共同生活室を設け、個室を基本とするもの)と、従来型(個室と多床室)に分かれます。費用の話でこの区別が出てくるのは、居住費の基準費用額が「施設の状況その他の事情を勘案して」厚生労働大臣が定めるものとされているためです(介護保険法第51条の3第2項第2号)。つまり居室タイプによって額が変わる仕組みで、金額そのものは制度改定で動きます。この記事では金額を断定せず、決まり方を「費用の徹底比較」の章で整理します。
【当サイト集計】特養は全国11,086件・広域型の定員は中央値70人
| 区分 | 施設数 | 定員を公表している施設 | その合計定員 | 1施設あたりの定員(中央値) |
|---|---|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(広域型・定員30人以上) | 8,525件 | 3,909件 | 284,956人 | 70人 |
| 特別養護老人ホーム(地域密着型・定員29人以下) | 2,561件 | 1,159件 | 30,799人 | 29人 |
介護保険法上の「介護老人福祉施設」として施設サービスの対象になるのは、定員30人以上の広域型です。定員29人以下のものは地域密着型介護老人福祉施設として別の区分になります。地域密着型サービスの費用は、その市町村の長が指定した事業者から受けたときに支給される仕組みです(介護保険法第42条の2第1項)。「隣の市の特養には申し込めないと言われた」という話の一部は、この区分の違いによるものです。
定員は、0または空欄の事業所を「未記入」として集計から除いています(510は8,525件中4,616件が未記入、540は2,561件中1,402件が未記入)。したがって合計定員は定員を公表している施設だけの合計であり、地域の総定員ではありません。定員欄に日付が入った政府データ側の誤記が全国で2件あり、上限2,000人で弾いて未記入として扱っています。
出典:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」オープンデータ(CC BY 4.0)
特養の待機:先着順ではなく「必要性が高い人から」
「特養は何年も待つ」と言われます。ここで押さえておきたいのは、待ち行列の順番が申込順ではないことです。省令は、空きより申込者が多い場合の扱いを次のように定めています。
同第7条第1項「指定介護老人福祉施設は、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難な者に対し、指定介護福祉施設サービスを提供するものとする。」
出典:e-Gov法令検索「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」(平成十一年厚生省令第三十九号)第7条(https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100039)/2026年8月12日確認
つまり申込書に書く「介護の必要の程度」と「家族等の状況」が、そのまま優先度の判断材料になります。同居家族の就労状況や介護者自身の健康状態が変わったときは、申込内容を更新できるかを施設に確認しておくと、実態と申込書がずれたままになるのを防げます。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の基本情報
「サ高住」とはサービス付き高齢者向け住宅の略称です。根拠になるのは高齢者住まい法(高齢者の居住の安定確保に関する法律)です。特養と決定的に違うのは、制度の入口が「介護保険の指定」ではなく「住宅の登録」である点です。しかも条文は「登録を受けることができる」と書いており、義務ではありません。
ここで大切なのは、法律が名前に付けた「サービス」の中身が条文で定義されていることです。状況把握サービス=心身の状況を把握して状況に応じた一時的な便宜を供与すること、生活相談サービス=相談に応じて必要な助言を行うこと。どちらも「介護をする」とは書かれていません。
同法第7条第1項第5号(登録の基準)「入居者に国土交通省令・厚生労働省令で定める基準に適合する状況把握サービス及び生活相談サービスを提供するものであること。」
出典:e-Gov法令検索「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(平成十三年法律第二十六号)第5条・第7条(https://laws.e-gov.go.jp/law/413AC0000000026)/2026年8月12日確認
契約で守られること(登録基準に入っているもの)
「賃貸住宅だから権利関係があいまいなのでは」と不安に感じる方がいますが、登録の基準には契約面の要件が並んでいます。登録を受けている住宅であれば、次の内容が満たされているはずのものとして確認できます。
- 書面による契約であること(第7条第1項第6号イ)
- 居住部分が明示された契約であること(同号ロ)
- 敷金・家賃等・前払金を除き、権利金その他の金銭を受領しない契約であること(同号ハ)
- 前払金を受け取る場合は、その算定の基礎と返還債務の算定方法が明示された契約であること(同号ニ)
- 入居後一定期間内に契約が解除・終了した場合、省令で算定される額を除いて前払金を返還する契約であること(同号ホ)
- 入居者の病院への入院その他省令で定める理由により、事業者が居住部分を変更したり契約を解約したりできないこと(同号ヘ)
- 前払金の返還債務に備えた保全措置が講じられていること(第7条第1項第8号)
【当サイト集計】一般型と介護型(特定施設)の実際の比率
サ高住は「一般型」と「介護型(特定施設入居者生活介護の指定を受けたもの)」に分けて説明されます。では実際にどちらがどれだけあるのか。登録データには「特定施設の指定の有無」の届出欄があるので、数えられます。
| サ高住の区分 | 件数 | 割合 | 介護を提供するのは誰か |
|---|---|---|---|
| 特定施設の指定あり(介護型) | 857件 | 10.3% | 住宅の職員が計画に基づいて提供 |
| 特定施設の指定なし(一般型) | 7,455件 | 89.7% | 外部の訪問介護・通所介護などと個別契約 |
母数は登録8,312件です。約9割が一般型で、この場合の介護は住宅ではなく外部の事業者との契約になります。指定を受けた1割の住宅では、介護保険法第8条第11項の「特定施設入居者生活介護」として、有料老人ホームの介護付きと同じ枠組みで介護が提供されます。有料老人ホームとサ高住の線引きは根拠法の違いから整理した記事で詳しく扱っています。
介護保険法第8条第11項「この法律において『特定施設』とは、有料老人ホームその他厚生労働省令で定める施設であつて、第二十一項に規定する地域密着型特定施設でないものをいい、『特定施設入居者生活介護』とは、特定施設に入居している要介護者について、当該特定施設が提供するサービスの内容、これを担当する者その他厚生労働省令で定める事項を定めた計画に基づき行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話であつて厚生労働省令で定めるもの、機能訓練及び療養上の世話をいう。」
出典:サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム(国土交通省)登録データ(二次利用の条件を一次情報で確認中のため、ライセンス名は記載していません)/e-Gov法令検索「介護保険法」第8条(https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123)/2026年8月12日確認
費用の徹底比較
費用の比較でつまずきやすいのは、両者の金額が同じ性質の数字ではないことです。片方は制度が決める金額、もう片方は事業者が設定して届け出た金額です。ここを混ぜて「特養◯万円、サ高住◯万円」と並べると、比較しているつもりで別のものを比べてしまいます。まず決まり方から整理します。
費用の決まり方の違い
| 費用項目 | 特養(介護老人福祉施設) | サ高住 |
|---|---|---|
| 介護サービス費 | 要介護状態区分・地域等を勘案して厚生労働大臣が定める基準で算定。原則その9割が保険から給付され、残りが自己負担(介護保険法第48条第2項) | 一般型は外部の事業者と個別契約するため、使った量に応じて変動。介護型は住宅が「特定施設入居者生活介護」として計画に基づき提供する(介護保険法第8条第11項) |
| 自己負担の割合 | 原則1割。一定以上の所得がある第1号被保険者は2割、さらに上の区分は3割(第49条の2第1項・第2項) | 同左(介護保険の給付部分は同じ仕組み) |
| 居住費・食費 | 施設介護サービス費の対象外(第48条第1項の括弧書き)。所得・資産が一定以下なら特定入所者介護サービス費が支給される(第51条の3) | 家賃・共益費・食事の対価として住宅が設定し、登録時に届け出る |
| 軽減のしくみ | 食費・居住費それぞれに「基準費用額」と「負担限度額」があり、その差額が支給される(第51条の3第2項) | 介護保険の給付部分には高額介護サービス費があるが、家賃には介護保険の軽減制度はない |
| 入居時の一時金 | 制度上の入居一時金はない | 登録データでは前払金方式は217件(8,312件中2.6%)で、大半は前払金なし |
同第48条第2項「施設介護サービス費の額は、施設サービスの種類ごとに、要介護状態区分、当該施設サービスの種類に係る指定施設サービス等を行う介護保険施設の所在する地域等を勘案して算定される……費用の額を勘案して厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額……の百分の九十に相当する額とする。」
同第49条の2第1項は、一定以上の所得がある第1号被保険者について「百分の九十」を「百分の八十」と読み替え、第2項はさらに上の区分について「百分の七十」と読み替えると定めています。
同第51条の3第2項第1号・第2号は、食費・居住費それぞれについて「基準費用額」(厚生労働大臣が定める費用の額)から「負担限度額」(所得の状況等を勘案して厚生労働大臣が定める額)を控除した額を、特定入所者介護サービス費として支給すると定めています。
出典:e-Gov法令検索「介護保険法」(平成九年法律第百二十三号)第48条・第49条の2・第51条の3(https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123)/2026年8月12日確認
特養の「負担限度額認定制度」に注目
上の表の「軽減のしくみ」の行が、特養を検討するご家族にとって最も効く部分です。負担限度額認定制度は、所得・資産が一定以下の方について、食費・居住費の自己負担を負担限度額までに抑える仕組みです。制度上の位置づけは介護保険法第51条の3の「特定入所者介護サービス費」で、申請して認定を受けていないと適用されません。申請先は市区町村です。所得段階によって限度額が変わるため、まず該当するかどうかを窓口で確認するのが最短です。
【当サイト集計】サ高住の家賃はいくらで届け出られているか(8,303件)
特養の金額は出せませんが、サ高住は出せます。登録制度が家賃・共益費・食事の対価の届出を求めているためです。金額を比較できるのは片側だけという前提で、サ高住側の実勢だけを示します。
| サ高住の月額(住宅ごとの代表値) | 25パーセンタイル | 中央値 | 75パーセンタイル | 母数 |
|---|---|---|---|---|
| 家賃+共益費 | 66,000円 | 80,700円 | 105,000円 | 8,303件 |
| 家賃+共益費+食事の対価 | 113,600円 | 131,000円 | 159,969円 | 7,998件 |
| うち特定施設の指定あり(介護型)の家賃+共益費 | 85,388円 | 108,100円 | 139,525円 | 856件 |
| うち特定施設の指定なし(一般型)の家賃+共益費 | 65,000円 | 79,000円 | 100,925円 | 7,447件 |
介護型のほうが家賃+共益費で約2万9千円高い位置にあります。ただしこれは家賃部分の差であって、介護型では介護サービス費が要介護度ごとの定額になる一方、一般型では使った量に応じて変動します。「一般型のほうが安い」と言えるのは家賃の欄までで、介護を含めた総額の大小は要介護度と利用量が決まらないと分かりません。
住宅ごとの代表値は「家賃の最低額と最高額の単純平均+共益費の最低額と最高額の単純平均」で1つの数字にまとめています(登録データは1住宅の中に間取り違いの部屋があるため家賃が範囲で登録されており、部屋タイプ別の戸数が無く戸数による加重ができないためです)。25/75パーセンタイルは線形補間で算出しています。
家賃の記載額が下限10,000円未満の7件と上限1,000,000円超の2件は、桁誤り等の疑いがあるため金額の集計から除外し、母数は8,303件です。食事の対価は、この9件に加えて記載のない297件と0円以下の8件を除いた7,998件で集計しています(母集団を家賃の集計とそろえるためです)。
出典:サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム(国土交通省)登録データ(二次利用の条件を一次情報で確認中のため、ライセンス名は記載していません)
サ高住の実際の家賃水準は地域差が大きいため、公的データの集計値も参考になります。埼玉県(家賃+共益費の中央値8.3万円)・茨城県(同7.0万円)・沖縄県(同6.0万円)の地域別ページで、市区町村ごとの相場と施設数を確認できます(2026年6月末時点)。
サービス・介護体制の比較
費用と並んで重要なのが、日々の生活を支えるサービス・介護体制の違いです。ここでは「◎○△」の印象ではなく、法令が義務づけている線がどこにあるかで整理します。義務でない部分は施設ごとに差が出る部分であり、そこが見学で聞くべき場所です。
法令が義務づけている線の違い
| 項目 | 特養(省令第39号) | サ高住(高齢者住まい法) |
|---|---|---|
| 状況把握・生活相談 | 生活相談員を入所者100人ごとに1人以上・常勤(第2条第1項第2号・第5項) | 登録の要件(第7条第1項第5号)。基準の内容は省令が定める |
| 身体介護(入浴・排せつ等) | 1週間に2回以上の入浴または清しき(第13条第2項)ほか、排せつ・おむつ交換等の規定あり | 登録の要件ではない。一般型は外部サービス、介護型は特定施設として提供 |
| 夜間の職員 | 常時1人以上の常勤の介護職員(第13条第7項) | 法令上の一律の義務なし。住宅ごとに確認が必要 |
| 看護職員 | 入所者数に応じた常勤換算の下限あり(第2条第1項第3号ロ)。うち1人以上は常勤 | 法令上の一律の義務なし |
| 医療機関との連携 | 急変時の相談・診療・入院受入れの体制を確保した協力医療機関を定める。年1回以上確認し知事に届出(第28条) | 法令上の一律の義務なし |
| 入院したときの契約 | 退院可能になったら速やかに再入所できるよう努める(第28条第5項) | 入院その他省令で定める理由で、事業者が居住部分の変更や契約の解約をできない(第7条第1項第6号ヘ) |
| 重要事項の開示 | 運営規程の概要・従業者の勤務体制・協力医療機関・利用料等を掲示し、原則ウェブサイトに掲載(第29条) | 登録内容が「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」で公開される |
高齢者の居住の安定確保に関する法律 第7条第1項第6号ヘ「サービス付き高齢者向け住宅事業を行う者が、入居者の病院への入院その他の国土交通省令・厚生労働省令で定める理由により居住部分を変更し、又はその契約を解約することができないものであること。」
出典:e-Gov法令検索「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」第28条・第29条(https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100039)/「高齢者の居住の安定確保に関する法律」第7条(https://laws.e-gov.go.jp/law/413AC0000000026)/いずれも2026年8月12日確認
認知症への対応
特養は、常時の介護を必要とし居宅での生活が困難な方を対象とする施設であるため(省令第39号第7条第1項)、認知症が進んだ方も入所しています。サ高住の登録基準には認知症への対応に関する要件がありません。したがって受け入れの可否と対応できる範囲は住宅ごとに異なり、法令からは一律に言えません。認知症の症状がある親御さんの場合は、グループホームや介護型のサ高住も含めて、対応できる範囲を住宅ごとに確認しながら比較することになります。
入居条件の違い
「特養は要介護3以上」という言い方は広く使われていますが、これがどの条文から出てくるのかは意外に知られていません。ここを正確に押さえておくと、要介護2以下のご家族が相談に行くときに、何を根拠に相談すればよいかがはっきりします。順に追います。
特養の「要介護3以上」はどの条文から来るのか
- 介護保険法第8条第22項が、特別養護老人ホームに入所する要介護者を「厚生労働省令で定める要介護状態区分に該当する状態である者その他居宅において日常生活を営むことが困難な者として厚生労働省令で定めるもの」に限ると定めています。この括弧書きには「以下この項及び第二十七項において同じ」とあり、定員30人以上の介護老人福祉施設(第27項)にも同じ限定が及びます。
- 介護保険法施行規則第17条の9が、その「厚生労働省令で定める要介護状態区分」を、認定省令第1条第1項第3号から第5号までと特定しています。
- 認定省令第1条第1項の第3号=要介護三、第4号=要介護四、第5号=要介護五です。ここではじめて「要介護3・4・5」という具体の区分が出てきます。
- 介護保険法施行規則第17条の10が、要介護1・2(認定省令第1条第1項第1号・第2号)にあたる方でも、「その心身の状況、その置かれている環境その他の事情に照らして、居宅において日常生活を営むことが困難なことについてやむを得ない事由があると認められるもの」を対象に含めています。これが特例入所です。
介護保険法施行規則第17条の9(法第八条第二十二項の厚生労働省令で定める要介護状態区分)「法第八条第二十二項の厚生労働省令で定める要介護状態区分は、要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令(平成十一年厚生省令第五十八号。以下「認定省令」という。)第一条第一項第三号から第五号までに掲げる要介護状態区分とする。」
介護保険法施行規則第17条の10(法第八条第二十二項の居宅において日常生活を営むことが困難な者として厚生労働省令で定めるもの)「……認定省令第一条第一項第一号又は第二号に掲げる要介護状態区分に該当する者であつて、その心身の状況、その置かれている環境その他の事情に照らして、居宅において日常生活を営むことが困難なことについてやむを得ない事由があると認められるものをいう。」
認定省令第1条第1項 第三号「要介護三 要介護認定等基準時間が七十分以上九十分未満である状態……」/第四号「要介護四 ……九十分以上百十分未満……」/第五号「要介護五 ……百十分以上……」
出典:e-Gov法令検索「介護保険法」第8条(https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123)/「介護保険法施行規則」第17条の9・第17条の10(https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100036)/「要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令」第1条(https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100058)/いずれも2026年8月12日確認
年齢・要介護度の条件比較
| 条件項目 | 特養 | サ高住 |
|---|---|---|
| 年齢 | 介護保険の第1号被保険者は65歳以上。40〜64歳は特定疾病による要介護認定が前提(介護保険法第9条・第7条第3項) | 60歳以上の者、または要介護認定・要支援認定を受けている60歳未満の者(省令第3条) |
| 要介護認定 | 原則は要介護3・4・5(施行規則第17条の9)。要介護1・2は「やむを得ない事由」がある場合の特例入所(同第17条の10) | 認定は要件ではない(60歳以上の場合) |
| 同居する人 | 法令上の限定なし | 単身か、配偶者・60歳以上の親族・認定を受けている60歳未満の親族等との同居(省令第3条第1号・第2号) |
| 申込みが多いときの扱い | 介護の必要の程度と家族等の状況を勘案し、必要性が高い人を優先(省令第39号第7条第2項) | 法令上の優先順位の規定はなく、住宅ごとの入居審査 |
| 認知症の受け入れ | 常時介護を要し居宅生活が困難な方が対象(省令第39号第7条第1項) | 法令上の要件なし。住宅ごとに異なる |
| 医療処置の受け入れ | 協力医療機関を定める義務あり(同第28条)。個々の処置の可否は施設ごと | 法令上の要件なし。住宅ごとに異なる |
出典:e-Gov法令検索「国土交通省・厚生労働省関係高齢者の居住の安定確保に関する法律施行規則」(平成二十三年厚生労働省・国土交通省令第二号)第3条(https://laws.e-gov.go.jp/law/423M60000900002)/2026年8月12日確認
特養の「特例入所」について
要介護1・2の方の特例入所について、法令が定めているのは「やむを得ない事由」という枠までで、その具体的な類型は法令ではなく厚生労働省の通知が示しています。通知は、次のような事情がある場合を検討するよう求めています。
- 認知症であることにより、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られること
- 知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られること
- 家族等による深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難であること
- 単身世帯である、同居家族が高齢または病弱である等により、家族等による支援が期待できず、地域での介護サービス等の供給が不十分であること
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc0609&dataType=1&pageNo=1 /2026年8月12日確認
※特例入所に該当するかどうかを判断するのは市町村です。上の類型はあくまで検討の目安であり、該当すれば必ず入所できるという性質のものではありません。
サ高住の入居審査
サ高住は、上の省令の要件を満たしていれば法令上は入居できます。ただし登録基準には「どんな状態の人を受け入れるか」の規定がありません。そのため、医療依存度が高い方(たん吸引・経管栄養・透析など)については、住宅ごとの体制で受け入れの可否が分かれます。ここは法令からは答えが出ないので、住宅ごとに個別に確認する項目です。断られたとしても、それは制度上の資格の問題ではなく、その住宅の体制の問題です——別の住宅なら受け入れられることがあります。
特養が向いている人・サ高住が向いている人
ここまでの比較を踏まえ、条件ごとに整理します。優劣ではなく、前提条件が違うと答えが変わるという形で読んでください。実際には「今の状態」だけでなく「3〜5年後の状態」も見据えて選ぶことになります。
特養を軸に考えるのが現実的な条件
- 要介護3・4・5の認定を受けている:施行規則第17条の9の原則にあてはまり、申込みの対象になります
- 要介護1・2だが在宅の継続が難しい事情がある:特例入所の相談先は市区町村です(施行規則第17条の10)
- 夜間の介護と急変時の医療連携を、体制として担保しておきたい:省令第39号第13条第7項・第28条が線を定めています
- 食費・居住費の負担を所得に応じて抑えたい:負担限度額認定の対象になるかを窓口で確認できます(介護保険法第51条の3)
- 入居まで待つ時間の余裕がある:申込順ではなく必要性の高さで優先されるため、待つ期間は事前に読めません
サ高住を軸に考えるのが現実的な条件
- 要介護認定がまだない、または要支援〜要介護2程度:60歳以上であれば省令の要件を満たします
- 比較的早く住まいを決めたい:住宅ごとの入居審査であり、法令上の順番待ちの仕組みはありません
- 住まいとしての自由度を残したい:賃貸借等の契約であり、居住部分が明示された書面契約が登録の要件です
- 今の在宅サービスやケアマネジャーを続けたい:一般型なら外部サービスとの契約を続ける形になります
- 夫婦で入りたい:省令第3条第2号が配偶者との同居を想定しています
- 重度化にも備えたい:特定施設の指定がある857件(10.3%)を候補に含めると、住宅の職員による介護の枠組みが使えます
「とりあえず申込」を考えるとき
特養は待機が長いという特性から、「まだ施設は早いが、将来に備えて申し込んでおく」という方も一定数いらっしゃいます。申込みの前提は、原則として要介護3以上の認定を受けていることです(施行規則第17条の9)。複数の特養へ同時に申し込むことも一般的に行われています。申込先や手続きは、地域包括支援センター、担当のケアマネジャー、または入居を希望する特養に直接問い合わせると教えてもらえます。
施設を探す前に確認したいこと
「特養とサ高住のどちらにすればいいか」という判断は、情報収集だけでは決まりません。ただし、見学に行く前に書面で確認できることは意外に多く、そこを済ませておくと見学の時間を「書面では分からないこと」に使えます。
見学の前に、書面で確認できること
| 確認項目 | 特養で確認すること | サ高住で確認すること |
|---|---|---|
| どこに載っているか | 掲示された重要事項と、原則としてウェブサイトに掲載される重要事項(省令第39号第29条) | サービス付き高齢者向け住宅情報提供システムの登録情報と、重要事項説明書 |
| 費用 | 負担限度額認定の対象になるか(市区町村窓口)、加算の有無と内容 | 家賃・共益費・食費の内訳、状況把握/生活相談の対価、介護サービス費が別建てか |
| 職員体制 | 従業者の勤務の体制(第29条の掲示事項)。夜間の人数 | 夜間の職員配置の有無と時間帯、看護職員がいる時間帯 |
| 医療 | 協力医療機関の名称と、急変時・入院時の取り決め(第28条) | 協力医療機関の有無、対応できる医療処置の範囲 |
| 重度化・退去 | 看取りへの対応方針、入院後の再入所の扱い(第28条第5項) | 契約書の解除事由。入院を理由に解約されない要件が反映されているか(住まい法第7条第1項第6号ヘ) |
| お金の保全 | 制度上の入居一時金はない | 前払金がある場合、算定の基礎・返還債務の算定方法・保全措置(第7条第1項第6号ニ・ホ、第8号) |
【当サイト集計】どちらが多い地域かは、都道府県で入れ替わる
「特養が空かないからサ高住」という順番で探す方は多いのですが、その地域にどちらの在庫が厚いかは、都道府県によって入れ替わります。当サイトの集計で上位・下位を並べると、顔ぶれが一致しません。
| 順位 | 特養が多い都道府県(厚生労働省データ・件) | サ高住の登録が多い都道府県(国土交通省データ・件) |
|---|---|---|
| 1 | 東京都 627 | 大阪府 856 |
| 2 | 大阪府 578 | 北海道 527 |
| 3 | 千葉県 553 | 兵庫県 482 |
| 4 | 北海道 504 | 埼玉県 477 |
| 5 | 埼玉県 500 | 東京都 422 |
| 45 | 高知県 66 | 高知県 37 |
| 46 | 佐賀県 65 | 宮崎県 26 |
| 47 | 鳥取県 54 | 佐賀県 20 |
特養は最多の東京都627件に対し最少の鳥取県54件で約11.6倍、サ高住は最多の大阪府856件に対し最少の佐賀県20件で約42.8倍の開きがあります。東京都は特養では1位ですがサ高住では5位、大阪府はサ高住で1位です。「一般にどちらが多いか」ではなく「自分の地域でどちらが多いか」で探す順番を決めたほうが、空振りが減ります。
※両者は根拠となる制度も届出先も異なるデータで、実体が重なる施設もあるため、足し合わせて「地域の施設総数」とすることはできません(特定施設の指定を受けたサ高住は厚生労働省側にも登録されており、当サイトの実測で688件が重複します)。あくまで「どちらの形態が多い地域か」を見るための並置です。
出典:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」オープンデータ(CC BY 4.0)/サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム(国土交通省)登録データ(二次利用の条件を一次情報で確認中のため、ライセンス名は記載していません)
費用を抑えるための制度活用
施設に入居する際は、公的な費用軽減制度を確認しておくことで、実質的な負担が変わる可能性があります。代表的なものとして、自己負担の上限を超えた分が払い戻される高額介護サービス費と、特養の食費・居住費に関わる負担限度額認定があります。いずれも申請しなければ適用されません。費用を抑えた施設選びの全体像は老人ホームの費用を抑える方法をまとめた記事もご参照ください。
まとめ
この記事では、特養(特別養護老人ホーム)とサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の違いを、条文と当サイトの集計データで比べてきました。最後に要点を整理します。
- 制度の入口:特養は老人福祉法の施設で、定員30人以上のものが介護保険法上の介護老人福祉施設(第8条第27項)。サ高住は高齢者住まい法第5条第1項にもとづく住宅の登録で、義務づけられているのは状況把握と生活相談です
- 入居条件:特養の原則は要介護3・4・5(介護保険法第8条第22項→施行規則第17条の9→認定省令第1条第1項第3〜5号)。要介護1・2は「やむを得ない事由」がある場合の特例入所(同施行規則第17条の10)。サ高住は60歳以上、または認定を受けている60歳未満の方が対象です
- 費用:特養は介護サービス費が要介護度ごとの定額の1〜3割、食費・居住費は基準費用額と負担限度額の枠組み。金額そのものは当サイトのデータでは出せません。サ高住は当サイト集計で家賃+共益費の中央値80,700円(n=8,303)、食事の対価を加えて131,000円(n=7,998)。介護サービス費・水道光熱費・生活相談の対価は含みません
- 介護体制:特養は人員配置・入浴回数・夜間職員・協力医療機関まで省令の基準があります。サ高住の約9割(7,455件)は一般型で、介護は外部契約。特定施設の指定がある857件(10.3%)は住宅の職員が提供します
- 規模と地域:特養は全国11,086件で広域型の定員は中央値70人。サ高住は8,312件・290,803戸。どちらが多い地域かは都道府県で入れ替わります
施設選びに正解はなく、ご家族それぞれの事情によって選択は変わります。特養・サ高住以外にも有料老人ホームの3類型や老健(介護老人保健施設)など多くの選択肢があります。まずは地域包括支援センターや市区町村の窓口に現状を相談し、そのうえで候補を絞ることをお勧めします。
よくある質問
特養とサ高住、どちらが安いですか?
当サイトのデータでは断定できません。金額を出せるのはサ高住だけだからです。国土交通省の登録データを当サイトが集計したところ、家賃と共益費の代表値は中央値80,700円(n=8,303件・2026年8月11日取得)、食事の対価を加えると131,000円(n=7,998件)でした。この金額に介護サービス費・水道光熱費・生活相談の対価は含まれません。一方、特養の月額は、集計元である厚生労働省のオープンデータに利用料金の列がないため出せません。特養の費用は、介護サービス費が要介護度ごとの定額の1〜3割、食費・居住費が基準費用額と負担限度額の枠組みで決まる、という制度の説明までが当サイトで書ける範囲です。
要介護2でも特養に入居できますか?
特例入所として認められる場合があります。介護保険法第8条第22項が入所者を厚生労働省令で定める要介護状態区分に限り、介護保険法施行規則第17条の9がそれを要介護3・4・5と特定しています。そのうえで同施行規則第17条の10が、要介護1・2にあたる方でも「居宅において日常生活を営むことが困難なことについてやむを得ない事由があると認められるもの」を対象に含めています。該当するかを判断するのは市町村です。厚生労働省の通知「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」が、認知症・知的障害や精神障害・虐待・単身等の事情を検討の目安として示しています。市区町村の介護保険担当窓口にご相談ください。
サ高住に入居後、重度化したらどうなりますか?
住宅の区分によって変わります。当サイトの集計では、登録されているサ高住8,312件のうち特定施設の指定を受けていると届け出た住宅は857件(10.3%)で、残る7,455件(89.7%)は一般型でした。一般型では介護を外部の事業者と個別に契約するため、必要な介護量が介護保険の支給限度額を超えると、超えた分は全額自己負担になります。なお高齢者住まい法第7条第1項第6号ヘは、入居者の病院への入院その他省令で定める理由により事業者が居住部分を変更したり契約を解約したりできないことを、登録の基準としています。退去の話が出たときは、その理由が契約書のどの解除事由にあたるのかを書面で確認してください。
特養の入居申込はいつ頃からすべきですか?
申込みの前提は、原則として要介護3以上の認定を受けていることです(介護保険法施行規則第17条の9)。そのうえで知っておきたいのは、申込みが定員の空きを上回っている場合、指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準 第7条第2項が「介護の必要の程度及び家族等の状況を勘案し、指定介護福祉施設サービスを受ける必要性が高いと認められる入所申込者を優先的に入所させるよう努めなければならない」と定めていることです。つまり申込順ではありません。複数の特養へ同時に申し込むことも一般的です。状況が変わったときに申込内容を更新できるかを、申込先に確認しておいてください。
特養の待機者は何人くらいいますか?
当サイトでは出せません。当サイトが集計している厚生労働省「介護サービス情報公表システム」のオープンデータには、施設数・定員・所在地しか含まれておらず、入所申込者数や空き状況のデータがないためです。同じ理由で「入居まで平均何年」という数字も出していません。よく見る待機者数に触れたときは、それがどの調査の、いつ時点の、どの定義(同じ方の複数施設への申込みを重複して数えているかなど)による数字なのかをご確認ください。お住まいの地域の状況は、市区町村の介護保険担当窓口が把握しています。
特養とサ高住の違いを相談できる窓口はありますか?
お住まいの市区町村にある「地域包括支援センター」では、無料で施設選びの相談ができます。要介護認定に関することや負担限度額認定の該当可否は、市区町村の介護保険担当窓口が窓口です。あわせて民間の老人ホーム紹介サービスでも、専門相談員が個別の状況に合わせて施設を提案しています。制度の判断が必要なことは公的な窓口へ、候補の施設を集めることは紹介サービスへ、と使い分けると進めやすくなります。

