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介護で兄弟と揉めないために|役割分担と費用負担の話し合い方

親の介護で兄弟と揉めないための話し合い方
CARE ESSENTIALS

介護で兄弟と揉めないための話し合い方——役割・費用の分担を円満に決める進め方

最終更新:2026年5月17日 カテゴリ:介護の基礎
介護が始まると「誰が何をするか」「費用は誰が負担するか」で兄弟間の溝が深まりがちです。早めの話し合いと役割の見える化が、家族の関係を守る近道です。

兄弟で揉める典型パターン

「近くに住んでいる子ほど負担が大きい」「同居していない兄弟は口だけ出す」という不満が、きょうだい間の亀裂につながりやすいとされています。

親の介護が始まると、きょうだい間で「不公平感」が生まれやすくなります。これは決して特別なことではなく、ご家族からよく伺うお話です。代表的なパターンをいくつか整理してみます。

① 「近居の子」に負担が集中する

親と同居していたり、近くに住んでいたりする子は、日常的なサポートを担いやすくなります。遠方に住むきょうだいが「たまに来て意見だけ言う」状況が続くと、主に介護を担う側の疲弊感が増していきます。

② 「仕事が忙しい」を理由に参加しない

仕事や子育てを理由に介護から距離を置くきょうだいがいると、他のきょうだいとの間に温度差が生まれます。介護にどう関わるかは、それぞれの生活状況によって異なるのは当然ですが、「まったく関わらない」という状態は関係悪化につながりやすいとされています。

③ 介護方針をめぐる意見の対立

「施設に入れるべき」「自宅で看たい」「もっと医療的なケアが必要では」——親の状態が変化するたびに、きょうだいの方針がぶつかることがあります。それぞれが親を大切に思うからこそ、意見が割れてしまうケースは少なくありません。

④ 費用負担をめぐるトラブル

介護費用は月額で数万円〜十数万円になることも多く、誰がどう負担するかは避けて通れない話題です。親の介護費用は誰が払うべきかという問いに「正解」はなく、家族間で合意をつくっていく必要があります。

SOURCE 厚生労働省「令和4年度介護保険事業状況報告(年報)」によると、在宅で主に介護を担っている方の続柄として、同居家族が占める割合は依然として高く、その中でも「子」が最も多い構成となっています。きょうだいがいる場合に役割分担が課題となりやすい背景として参考になるデータです。

⑤ 親の「お気に入り」問題

親がきょうだいの中で特定の子に相談・依存しやすい状況も、摩擦の原因になることがあります。「あの子しか話を聞かない」「なぜ自分には相談してくれないのか」という疎外感は、協力体制を崩すことがあります。

CAUTION 介護が始まってから「誰がやるか」の話し合いをしようとすると、すでに誰かが疲弊しているケースがほとんどです。できれば親が元気なうちに、将来の介護について家族で一度話しておくことが、後々の摩擦を減らすとされています。

話し合いを始める前の準備

感情的になりやすい介護の話し合いは、事前に「情報の共有」と「場の設定」を整えてから臨むと、建設的な対話になりやすいとされています。

いきなり「費用どうする?」「誰が面倒みる?」と切り出すと、場が硬直してしまいがちです。話し合いの前に、以下の準備を整えておくと、きょうだい全員が同じ土台に立って話せるようになります。

親の現状を「見える化」する

まず、親の体の状態・認知機能・かかりつけ医の状況・現在の生活の様子をきょうだいで共有します。日頃一緒にいるきょうだいだけが詳細を知っていて、遠方のきょうだいが「そんなに悪かったの?」と後から驚くケースはよく聞かれます。

  • かかりつけ医の名前・連絡先
  • 服用中の薬・通院頻度
  • 日常生活でできること・できないこと
  • 要介護認定の有無と介護度(要介護区分の違いはこちら
  • 親本人の希望(自宅で過ごしたいか、施設への抵抗感はあるかなど)

話し合いの「場」を設定する

LINEやメールだけで話し合おうとすると、誤解が生まれやすく、感情的なメッセージのやりとりになりがちです。できれば対面で、難しければビデオ通話で「話し合いの場」を設けることをおすすめします。

POINT 話し合いには「親本人も同席する」のが理想とされています。親が「子どもたちに迷惑をかけたくない」と感じているケースも多く、親の意向を直接聞くことで、きょうだい間の押し付け合いを避けやすくなります。

「責める場ではない」という雰囲気をつくる

話し合いを始める際に、「今日は誰かを責めたり過去のことを蒸し返したりするのではなく、これからのことを一緒に考えるための時間にしよう」と最初に一言添えるだけで、場の雰囲気が変わることがあります。

話し合いの進め方

話し合いは「現状確認→課題の洗い出し→役割案の提示→合意→記録」の5ステップで進めると、感情論に流れにくく、実行可能な合意が得られやすいとされています。

ステップ1:現状の共有(10〜15分)

準備段階で整理した親の現状を、全員に共有します。できることとできないことを具体的に伝えることで、介護の必要性をきょうだい全員がリアルに感じられるようになります。

ステップ2:課題を書き出す(10分)

「今、誰かが困っていること」「これから発生しそうな課題」をホワイトボードや紙に書き出します。「買い物支援が週3回必要」「夜の見守りが心配」「病院の付き添い担当が決まっていない」など、具体的な課題にすると話し合いやすくなります。

ステップ3:それぞれの状況を正直に話す(15〜20分)

「自分は週3回なら来られる」「平日は仕事でほぼ動けないが、週末は協力できる」「経済的に月3万円なら出せる」——それぞれが正直に自分のできる範囲を話します。この段階では批判せず、まず聞くことに集中します。

ステップ4:役割と費用の分担案を出す(20〜30分)

書き出した課題に対して、誰がどう担うかを具体的に割り当てていきます。詳しくは次のセクションで解説します。

ステップ5:合意内容をメモに残す

話し合いの結果は、その場でスマートフォンにメモするか、後日シンプルな表にまとめて、きょうだい全員に共有します。「言った・言わない」のトラブルを防ぐために、記録に残すことは大切です。

SOURCE 厚生労働省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン(2024年)」では、家族内での介護分担に関して「担い手の多様化」が推奨されており、一人に集中させないための話し合いの重要性が強調されています。また、同省が推進する「介護離職ゼロ」政策においても、家族・職場・行政が連携する枠組みの中で、家族内役割分担の明確化が重要な要素として位置づけられています。

役割分担の決め方

役割分担は「平等」より「公平」を目指すのがポイントです。それぞれの生活状況に合わせた「できること」を持ち寄ることで、長続きする分担が実現しやすくなります。

介護における役割分担は、「全員が同じことを同じ量やる」のではなく、それぞれの状況に応じた貢献の形を見つけることが大切です。

役割の種類を「見える化」する

介護に必要な役割は大きく以下のように分類できます。これを表にしておくと、何が分担できていて何が抜けているかが整理しやすくなります。

役割の種類 具体的な内容 向いているきょうだい
身体的サポート 通院同行・買い物代行・食事準備・入浴補助など 近くに住む子・時間に融通が利く子
精神的サポート 定期的な電話・訪問、親の話し相手 遠方の子でも電話で担える
情報収集・手続き 介護保険申請・施設見学・行政手続きの代行 時間を作りやすい子・調べることが得意な子
経済的サポート 介護費用の一部負担・緊急時の費用立替 収入に余裕のある子・物理的に動けない子
緊急時対応 急病・転倒時の対応、病院への付き添い 最も近くに住む子(交代制も可)

「遠くに住んでいるから何もできない」のではなく、「定期的な電話や情報収集を担う」「経済的に少し多めに負担する」といった形での貢献も、立派な役割分担です。

定期的に見直す仕組みをつくる

親の状態は時間とともに変化します。最初に決めた分担が半年後には合わなくなることもあります。「3か月に1回、LINEで状況を共有する」「年1回は顔を合わせて話し合う」など、定期的な見直しの機会をあらかじめ設けておくことをおすすめします。

なお、在宅介護に関わっているきょうだいが限界を感じ始めたサインについては、在宅介護の限界サインを解説した記事もあわせてご参照ください。

POINT 役割分担で大切なのは「頑張っているきょうだいへの感謝を言葉にする」ことです。介護を担っている側は「認めてもらえていない」と感じやすいものです。話し合いの場で「ありがとう」を伝えることが、関係を保つうえで想像以上に大きな効果を持つとされています。

ケアマネジャーを活用する

家族だけでの話し合いが難しい場合、担当のケアマネジャーを交えた話し合いが有効な場合があります。ケアマネジャーの選び方・活用法については別記事で詳しく解説していますが、ケアマネは「家族の調整役」としての側面も持っており、役割分担の整理を手伝ってもらえることがあります。

費用負担の話し合い方

介護費用の負担ルールに法律上の定めはなく、家族間の合意が基本です。「親の財産を先に使う」「残りを収入比で分担する」という枠組みが、実務的な出発点として参考にされることがあります。

介護費用の話し合いは、感情が絡みやすいテーマです。しかし、曖昧なままにすると後々の大きなトラブルに発展しやすいため、早めに「基本的な考え方」だけでも合意しておくことが重要です。

まず「親の財産・収入」を把握する

介護費用の原則として、まず親本人の年金・貯蓄・資産を活用するのが一般的な考え方です。そのため、きょうだい全員で親の経済状況を(大まかにでも)共有しておくことが出発点になります。親の収入・貯蓄の規模感、不動産などの資産について、話せる範囲で確認しておきましょう。

老人ホームの費用相場については、施設タイプ別の費用相場をまとめた記事が参考になります。また、介護離職を検討している場合は、費用負担の前に自分の収入も守れるかどうかを検討することも大切です。

きょうだいが追加負担する場合の考え方

親の財産だけでは不足する場合に、きょうだいが費用を補う必要が生じることがあります。この場合の分担方法として、いくつかの考え方があります。

分担方法 概要 メリット 注意点
均等割り 全員が同額を負担 シンプルでわかりやすい 収入差が大きい場合に不満が出やすい
収入比例 収入に応じた比率で負担 経済的に公平感がある 収入の開示が必要
役割との交換 現物介護を多く担う人は費用負担を少なく 身体的負担と経済的負担のバランスがとれる 貢献の換算基準が難しい
担える人が負担 現時点で余裕のある人が多く出す 柔軟に対応できる 長期継続すると不満がたまりやすい

どの方法が「正しい」とは一概には言えません。家族それぞれの状況に合わせた組み合わせを選ぶことが現実的です。話し合いの中で「今はAさんが多めに出してくれているが、半年後に見直す」という柔軟なルール設定も有効とされています。

SOURCE 民法第877条では「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められており、きょうだいも一定の扶養義務を負います。ただし、親の扶養については親の財産状況や各子の経済力を総合的に考慮して判断されるものであり、具体的な費用分担の割合については法律で一律に定められていません(e-Gov法令検索「民法」より)。

記録を残しておく大切さ

費用の立替や送金があった場合は、記録に残しておくことをおすすめします。後々の相続において「生前贈与があったかどうか」という問題に発展するケースもあります。税務的な観点では、仕事と介護の両立に関する記事も参考にしながら、必要に応じて税理士などの専門家に相談することも選択肢の一つです。

CAUTION 費用の立替・振り込みが繰り返し行われる場合、金額によっては贈与税の対象となる可能性があります。大きな金額のやりとりが生じる前に、税理士などの専門家への相談をご検討ください。

話し合いがうまくいかないときの対処法

きょうだい間で合意が難しい場合は、第三者(ケアマネ・地域包括支援センター・調停)を活用することで、関係を壊さずに前進できる場合があります。

どれだけ準備しても、話し合いがうまくいかないことはあります。それは家族の関係性や、それぞれが抱えてきた背景事情が絡むため、仕方のないことでもあります。そんなときに活用できる選択肢を整理します。

地域包括支援センターに相談する

地域包括支援センターは、介護に関する無料の相談窓口です。「家族間で意見が合わず困っている」という相談も受け付けており、必要に応じてケアマネや社会福祉士が間に入ってくれることがあります。

家庭裁判所の調停を利用する

扶養をめぐるトラブルが深刻化した場合、家庭裁判所に「扶養審判」や「扶養調停」を申し立てることができます。これは最終手段ではありますが、「きょうだいが話し合いに応じない」場合の選択肢として知っておいて損はありません。

一時的な「距離感の調整」も有効

感情的になっている時期に無理に話し合いを続けても、関係が悪化するだけのことがあります。「今月は一旦保留にして、来月改めて話そう」という選択も、長期的な関係維持のためには有効な場合があります。

POINT 介護の話し合いは「一度で全部決めなければならない」ものではありません。最初は「情報共有だけ」「今後の連絡方法だけ」を決めるミニ会議から始めて、少しずつ合意の範囲を広げていく段階的なアプローチが、関係を守りながら前進するうえで有効とされています。

まとめ

介護の話し合いで最も大切なのは「誰かを責めないこと」と「できることを正直に話すこと」です。役割と費用の分担は、親の状況変化に合わせて定期的に見直しながら進めていきましょう。

介護が始まると、きょうだい間で「誰がやるか」「費用はどうするか」という話し合いは避けられません。しかし、その話し合いは決してネガティブなものではなく、家族が同じ方向を向いて親を支えるための大切なプロセスです。

この記事でご紹介したポイントを振り返ります。

  • 話し合いの前に、親の現状をきょうだい全員で共有する
  • 「責める場」ではなく「一緒に考える場」として進める
  • 役割は「平等」ではなく「それぞれができること」を持ち寄る
  • 費用は「まず親の財産から」を基本に、不足分の分担ルールを話し合う
  • 合意内容は記録に残し、定期的に見直す
  • うまくいかないときは第三者(ケアマネ・包括支援センター等)を頼る

介護は長期にわたるプロセスです。一度決めたことが正解とは限りませんし、状況が変われば役割も変わります。「今できることを、今決める」という柔軟な姿勢で、きょうだいと少しずつ合意を重ねていただければと思います。

具体的な介護サービスの利用や費用の試算については、専門の相談員に相談することで、より現実的な計画を立てることができます。ぜひ地域包括支援センターや介護紹介サービスの無料相談もご活用ください。

よくある質問

介護を担わないきょうだいに費用を出させることはできますか?

民法上、直系血族やきょうだいには一定の扶養義務があるとされています。ただし、具体的な負担額は各自の経済力や親の財産状況によって異なり、法律で一律に定められているわけではありません。話し合いで合意できない場合は、家庭裁判所の扶養調停・審判という手続きを利用することができます。具体的なご判断については、弁護士や司法書士などの専門家にご相談ください。

一人っ子で介護を担う場合、どうすれば負担を減らせますか?

きょうだいへの分担はできませんが、公的な介護サービスを最大限に活用することで、一人で抱え込まない体制をつくることが大切です。要介護認定を受けていれば、訪問介護・デイサービス・ショートステイなどの在宅サービスを利用でき、負担軽減につながります。地域包括支援センターや担当ケアマネジャーに「一人で抱えている」と伝えることで、適切な支援につなげてもらいやすくなります。

介護費用の立替を長く続けていますが、後から請求できますか?

立替えた費用を後から他のきょうだいに請求することは、法的には可能な場合があります。ただし、請求できる金額や条件は状況によって異なるため、記録(領収書・送金履歴など)を残しておくことが重要です。また、相続時に「立替分を相続分に反映させる」という合意を家族間でしておくことも方法の一つです。具体的な対応については、弁護士などの専門家にご相談ください。

遠方に住んでいてほとんど介護に関われません。何かできることはありますか?

遠方でもできることは多くあります。定期的な電話で親の話し相手になる、介護保険の手続きや施設情報を調べる「情報担当」になる、経済的に少し多めに費用を負担する、近くで介護を担うきょうだいへの感謝を言葉で伝える——こうした関わり方でも、チームとして介護を支えることは十分できます。「来られないから何もできない」ではなく、「自分にできることを担う」という姿勢が、家族関係を守るうえで大切です。

介護をめぐってきょうだいと絶縁状態になってしまいました。どうすればよいですか?

まず、直接の連絡が難しい場合は、第三者(担当ケアマネジャーや地域包括支援センターの相談員)を介して情報共有だけでも行える状態にすることが現実的な第一歩です。どうしても話し合いが進まない場合は、家庭裁判所の「扶養調停」という手続きを利用することもできます。感情的な対立が深い場合は、弁護士などの専門家への相談も選択肢の一つです。具体的なご状況に合わせて、ご専門の方にご相談されることをおすすめします。

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