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親の介護費用は誰が払う?|兄弟負担と公的支援

親の介護費用は誰が払う兄弟負担と公的支援
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親の介護費用は誰が払う?兄弟間の負担分担と公的支援の考え方

最終更新:2026年5月17日 カテゴリ:状況・症状別
親の介護費用は、法律上「子どもたち全員」に負担義務があります。ただし一人で抱え込む必要はなく、兄弟間の話し合いや公的支援の活用で、家族全体の負担を大きく軽減できます。

介護費用の負担者の原則——法律はどう定めているか

民法上、子どもたちには親への「扶養義務」があります。ただし扶養義務の程度は「自分の生活を犠牲にしない範囲」とされており、無制限ではありません。

「親の介護費用は誰が払うのか」という問いに対して、法律の観点からは次のように整理されています。

民法上の扶養義務とは

日本の民法(第877条)では、直系血族(親子・祖父母と孫など)および兄弟姉妹は互いに扶養する義務があると定められています。つまり、子どもたち全員が、親の介護費用を負担する法的義務を持つと解釈されます。

ただし、この扶養義務は「自分の生活水準を著しく下げてまで負担しなければならない」という性質のものではありません。法律用語では「生活保持義務」(自分と同程度の生活を保障する義務)ではなく「生活扶助義務」(自分の生活に余裕がある範囲で援助する義務)とされており、各自の経済状況によって分担額が異なることは珍しくありません。

SOURCE 民法第877条第1項「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」、同第2項「家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる」(e-Gov法令検索より)

介護保険制度との関係

実際には、介護費用の大部分は介護保険制度によって賄われており、自己負担は原則1〜3割です。2024年度の厚生労働省資料によると、要介護認定者の約8割が1割負担となっています。まずは介護保険の活用によって費用総額を圧縮することが、家族の負担を減らす第一歩となります。

SOURCE 厚生労働省「令和4年度介護保険事業状況報告(年報)」によると、要介護認定者数は約690万人(第1号被保険者)。介護保険の自己負担割合は、所得に応じて1割・2割・3割の3段階が設けられています。
CAUTION 「親は年金があるから自分たちは払わなくていい」という考え方は、状況によっては成り立たない場合があります。要介護度が上がり施設入居となった場合、年金だけでは月額費用をカバーしきれないケースも一般的です。早めに費用の全体像を把握しておくことが大切です。老人ホームの費用相場についてはこちら(#26)もご参照ください。

兄弟で費用を分担する考え方

兄弟間での費用分担は、収入・同居の有無・介護への関与度などを総合的に考慮して決めるのが一般的です。法的な強制基準はなく、家族間の合意が基本となります。

「長男が払うべき」「同居している子が払うべき」といった慣習的な考え方は、現在の法律には明確に根拠がありません。実際の分担方法は家庭ごとに異なりますが、よく見られるパターンをご紹介します。

分担方法の3つのパターン

パターン 概要 向いているケース 注意点
均等分担 子ども全員で費用を等分する 兄弟の収入差が少ない場合 介護に関与できない兄弟から不満が出にくい
収入比例分担 各自の収入に比例して負担額を設定 収入差が大きい兄弟がいる場合 収入の開示に抵抗感を持つ場合もある
役割交換型 金銭負担と介護労働を交換する 遠方に住む兄弟と同居・近居の兄弟がいる場合 介護労働の「価値換算」をどうするか合意が必要

「介護した分は遺産から引けるか?」について

介護に多くの時間や費用を注いだ相続人は、遺産分割の際に「寄与分」を主張できる場合があります。これは民法904条の2に規定されており、療養看護などで特別の貢献をした相続人は、その貢献分を相続財産から上乗せして取得できる制度です。ただし、適用には一定の要件を満たす必要があり、実際の手続きは複雑になることもあります。具体的な適用可否については、弁護士や司法書士など専門家への相談をおすすめします。

POINT 兄弟間の金銭のやりとりは、後々のトラブルを防ぐために書面(メモ書きでも可)で記録しておくことをおすすめします。毎月の振込履歴をお互いに保管しておくだけでも、将来の相続時のトラブルを防ぐ助けになります。

兄弟で介護の役割分担や費用の話し合いをする際の具体的な進め方については、「介護で兄弟と揉めない話し合い方」(#15)もあわせてご覧ください。

親の年金・貯蓄をどう活用するか

親自身の年金や貯蓄は、介護費用の主要な財源となります。まず親の資産状況を把握したうえで、不足分を兄弟で補う設計が現実的なアプローチです。

多くの場合、介護費用の第一の財源は親自身の収入・資産です。子どもたちで話し合う前に、まず親の財政状況を把握することが重要です。

年金の種類と受給額の目安

日本の公的年金は大きく「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」に分かれます。厚生労働省の資料によると、老齢基礎年金の平均月額は約5〜6万円程度、老齢厚生年金を含めた総額の平均は男性で約16万円前後、女性で約10万円前後とされています(受給年数・加入期間によって大きく異なります)。

SOURCE 厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢厚生年金の平均年金月額は男性約163,875円、女性約104,878円。老齢基礎年金の平均年金月額は約56,316円。

年金だけでは足りない場合の流れ

在宅介護であれば月額の自己負担は一般的に数万円程度に収まることも多いですが、施設入居となると月15〜30万円前後の費用が必要になるケースもあります。年金収入が月10万円程度の場合、その差額を親の貯蓄や子どもたちで補うことになります。

年金のみでの施設入居を検討している場合は、「親の年金だけで入れる老人ホーム」(#30)の記事も参考になります。また費用が払えない場合に使える制度については「介護費用が払えない時の選択肢」(#27)をご覧ください。

POINT 親の資産状況(通帳・年金証書・不動産の有無など)は、できるだけ元気なうちに家族で確認しておきましょう。認知症が進行してから確認しようとすると、本人の意思確認が難しくなる場合があります。

成年後見制度について

親が認知症などで判断能力が低下した場合、介護費用の支払いや資産管理のために「成年後見制度」の利用を検討することになります。この制度では、家庭裁判所が選任した後見人が親の財産管理を行います。具体的な手続きや費用については、家庭裁判所や法テラスへのご相談をおすすめします。

使える公的支援制度

介護費用を抑えるための公的支援は複数存在します。高額介護サービス費・負担限度額認定・医療費控除の3つは特に見落としがちで、申請するだけで負担が軽減される可能性があります。

家族の負担を減らすために活用したい公的制度をまとめました。それぞれ申請が必要なため、知らないと受け取れないケースがほとんどです。

制度名 内容 申請先 対象
高額介護サービス費 1か月の介護保険の自己負担が上限額を超えた分を払い戻し 市区町村の介護保険担当窓口 介護保険利用者全員
負担限度額認定 施設入居時の食費・居住費を軽減 市区町村の介護保険担当窓口 一定以下の収入・資産の方
医療費控除 一部の介護サービス費を確定申告で控除 税務署(確定申告) 所得税を納めている方
介護休業給付金 介護休業中に賃金の67%程度を支給 ハローワーク(雇用主経由) 雇用保険加入の会社員
特定入所者介護サービス費 負担限度額認定と同内容(給付側の呼称) 市区町村の介護保険担当窓口 一定以下の収入・資産の方

高額介護サービス費のしくみ

介護保険サービスの自己負担額が1か月の上限を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。上限額は所得段階によって異なり、一般的な世帯では月額44,400円(2024年度時点・現役並み所得者を除く)が目安とされています。この制度は一度申請すれば以降は自動的に支給されることが多いため、早めの申請がポイントです。

SOURCE 厚生労働省「高額介護サービス費制度について」によると、区分ごとの自己負担上限額は、第4段階(一般)で月額44,400円、第3段階以下で月額24,600円〜15,000円(所得・世帯状況による)。

仕事を続けながら介護する方への支援

介護を理由に仕事を辞める「介護離職」は、ご自身の老後の生活にも大きな影響を与えます。「介護休業と介護休暇の違い」(#6)で解説しているように、一定期間は仕事を休みながら給付金を受け取れる制度があります。離職を考える前に、まずこれらの制度を確認してみましょう。

CAUTION 各制度の適用条件や申請期限は自治体や年度によって異なる場合があります。「自分が使えるかどうか」の具体的な確認は、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口または地域包括支援センターにご相談ください。

家族での話し合いの進め方

費用負担の話し合いは「感情論」にならないよう、事実の共有から始めることが大切です。現状の把握→費用の見積もり→役割分担という順序で進めると整理しやすくなります。

介護費用をめぐる家族間のトラブルは珍しくありません。ご家族からよくお聞きするのは「お金の話を切り出しにくかった」「最初から感情的になってしまった」というご経験です。以下のステップを参考にしてみてください。

STEP 1:現状の共有(事実ベースで)

  • 親の現在の要介護度・利用サービスと月額費用
  • 親の収入(年金額)と貯蓄の概算
  • 今後必要になりそうなサービスや施設の種類

STEP 2:費用の見積もり

  • 現在の月額費用と今後増加する可能性
  • 親の資産で何年分賄えるかのざっくり計算
  • 施設入居の場合の費用概算(老人ホームの費用相場 #26を参考に)

STEP 3:役割分担と費用負担の合意

  • 金銭的な支援ができる兄弟と、時間的に介護に関われる兄弟とで役割を分ける
  • 毎月の分担額・支払い方法を書面で残す
  • 定期的に見直す時期(例:半年に1回)を決めておく
POINT 話し合いが難航する場合は、地域包括支援センターや介護支援専門員(ケアマネージャー)に間に入ってもらうことも選択肢のひとつです。第三者が入ることで、感情的な対立が和らぐことがよくあります。

介護費用が最終的に払えなくなりそうな場合は、公的支援の活用や施設タイプの変更など選択肢があります。「介護費用が払えない時の選択肢」(#27)もあわせてご覧ください。

まとめ

介護費用は「誰か一人が全額負担する」ものではなく、親の資産・公的支援・兄弟間の分担を組み合わせて対応するものです。早めの話し合いと制度活用が、家族全員の負担を軽くします。

この記事でお伝えしたポイントを振り返ります。

  1. 法律上は子ども全員に扶養義務があるが、自分の生活を犠牲にしてまでの義務ではない
  2. 費用分担は家族間の合意が基本。収入・居住地・介護への関与度などを考慮して決める
  3. 親の年金・貯蓄が主要財源。不足分を兄弟で補う設計が現実的
  4. 高額介護サービス費・負担限度額認定・医療費控除など、申請が必要な公的支援を見落とさない
  5. 感情論を避け、事実の共有から話し合いを始める。定期的な見直しも大切

介護費用の問題は、ご家族の状況によって大きく異なります。「自分たちのケースでは何が使えるのか」「どう分担すればいいか」など、具体的な判断は地域包括支援センター・ケアマネージャー・税理士・弁護士など専門家にご相談されることをおすすめします。

よくある質問

親の介護費用を支払いたくないと言う兄弟がいます。法的に強制できますか?

民法上、子どもには親への扶養義務があります。ただし、家族間で話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に「扶養調停」を申し立てることが制度上は可能です。ただし、手続きには時間・費用・心理的負担を伴います。まずは第三者(地域包括支援センターや弁護士)を交えた話し合いを試みることをお勧めします。具体的な手順については弁護士にご相談ください。

親が施設に入居した場合、誰が費用の支払い名義人になりますか?

施設との契約上は、本人(親)が利用者・支払い名義人となるのが原則です。親が認知症等で意思能力が低下している場合は、家族が代理で手続きを行い、費用の実質的な負担を家族で分担するケースが一般的です。成年後見制度の利用が必要になる場合もありますので、施設や家庭裁判所にご相談ください。

介護費用を子どもが肩代わりした場合、贈与税はかかりますか?

親の生活費や医療費・介護費用の支払いは、一般的に「扶養義務の履行」として取り扱われ、通常の贈与税の対象にはならないとされています(国税庁「扶養義務者から生活費または教育費に充てるために取得した財産の非課税」)。ただし、必要以上に多額の場合や現金の手渡し方法によっては課税対象になる可能性もあるため、具体的なご状況については税理士にご相談ください。

親の貯蓄を介護費用に使い果たした後が不安です。どうすればよいですか?

貯蓄が尽きた場合でも、生活保護制度を利用することで介護施設に入居し続けられるケースがあります。また、介護保険の高額介護サービス費や負担限度額認定などの支援制度を活用することで、費用を抑えながら継続できる場合もあります。状況が深刻になる前に、市区町村の介護保険担当窓口や地域包括支援センターへの相談をおすすめします。

介護休業を取得した場合、給付金はいくら受け取れますか?

雇用保険の「介護休業給付金」は、休業前の賃金の67%程度が支給される制度です(雇用保険法による)。対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割取得が可能です。ただし所定の要件を満たす必要がありますので、詳細は介護休業の詳細記事(#6)またはハローワークでご確認ください。

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