介護休業と介護休暇の違いとは?給付金の計算方法・申請の流れを解説
介護休業と介護休暇の概要
介護休業とは
介護休業は、要介護状態にある家族を介護するために、まとまった期間仕事を休める制度です。「育児・介護休業法」第11条に定められており、対象家族1人につき通算93日を上限として、最大3回に分割して取得することができます。
「要介護状態」とは、同法の解釈では「負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態」とされています。必ずしも介護保険の要介護認定を受けていることが条件ではなく、実態として介護が必要であれば取得できる可能性があります。
介護休業中は「介護休業給付金」(雇用保険から支給)を受け取れる点が大きな特徴です。仕事を長期間休んでも、一定の収入を確保しながら介護に専念できるよう設計されています。
出典:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし(令和4年4月改正対応版)」
介護休暇とは
介護休暇は、通院の付き添いや急な介護のために1日単位・時間単位で取得できる短期の休暇です。同法第16条の5に定められており、対象家族が1人の場合は年5日まで、2人以上いる場合は年10日まで取得できます。
2021年1月の法改正により、時間単位での取得が可能になりました。午前中だけ通院に付き添い、午後から出勤するといった柔軟な使い方ができるようになり、仕事と介護の両立がしやすくなっています。
ただし、介護休暇は原則として無給です(会社が有給にしている場合を除く)。給付金の制度はなく、あくまで「休む権利」を法的に保障したものと理解しておくとよいでしょう。
出典:厚生労働省「育児・介護休業法 令和3年(2021年)1月1日施行の改正について」
対象となる「家族」の範囲
介護休業・介護休暇ともに、対象となる家族の範囲は法律で定められています。
- 配偶者(事実婚を含む)
- 父母(養父母を含む)
- 子(養子を含む)
- 配偶者の父母
- 祖父母・兄弟姉妹・孫
同居・扶養の有無は問われません。ただし、雇用契約の形態によっては取得要件が異なる場合もあります。詳細はお勤め先の担当部門や都道府県労働局にご確認ください。
比較表で違いを整理
ご家族からよく伺うのが「どちらを使えばよいかわからない」というご相談です。それぞれの制度の違いを一覧表で整理しましたので、ご参照ください。
| 比較項目 | 介護休業 | 介護休暇 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 育児・介護休業法 第11条 | 育児・介護休業法 第16条の5 |
| 取得日数上限 | 対象家族1人につき通算93日 | 対象家族1人:年5日 2人以上:年10日 |
| 分割取得 | 最大3回まで分割可 | 1日単位・時間単位で取得可 |
| 給付金 | 介護休業給付金あり(休業前賃金の67%相当) | なし(原則無給) |
| 主な取得目的 | 在宅介護体制の整備、施設探し、入院付き添いなど長期対応 | 通院付き添い、急な介護対応、各種手続きの同行など |
| 申請方法 | 原則2週間前までに会社へ書面等で申し出 | 当日申し出も可能(口頭・書面どちらも可) |
| 社会保険料 | 休業中も原則として被保険者のまま(保険料は発生) | 変動なし |
| 雇用形態 | 期間雇用者は一定条件あり | 日雇い労働者を除き対象 |
有給休暇との違い
介護休暇は原則無給ですが、会社が就業規則で有給と定めていれば有給での取得が可能です。また、介護休暇の取得日に有給休暇をあてることも、労働者側が希望すれば認められます。
有給休暇は取得目的を問わず使えますが、介護休業・介護休暇はいずれも「介護のための休暇」として法的に保護されています。介護を理由に解雇・降格・不利益取り扱いをすることは法律で禁止されており、安心して活用できる権利です。
介護休業給付金の仕組みと計算方法
介護休業給付金とは
介護休業給付金は、雇用保険の制度として、介護休業を取得した労働者に対してハローワーク(公共職業安定所)から支給されます。会社から支給されるものではなく、雇用保険に加入している方が対象です。
出典:厚生労働省・ハローワーク「雇用保険の給付について(介護休業給付金)」
支給額の計算方法
給付額の計算に使う「休業開始時賃金日額」は、介護休業を開始した日の前6ヵ月間の賃金(ボーナスを除いた毎月の給与)を180で割った金額です。
| 計算ステップ | 内容 | 例(月給30万円の場合) |
|---|---|---|
| ① 賃金日額の算出 | 休業前6ヵ月の給与合計 ÷ 180 | 180万円 ÷ 180 = 1万円 |
| ② 支給日数の確認 | 取得した介護休業の実日数(上限93日) | 例:30日間取得 |
| ③ 給付額の算出 | 賃金日額 × 支給日数 × 67% | 1万円 × 30日 × 67% = 20万1,000円 |
社会保険料・税金との関係
介護休業給付金は非課税であり、所得税の課税対象になりません。一方で、休業中も雇用保険・健康保険・厚生年金の被保険者としての資格は継続するため、社会保険料は原則として発生します(会社と折半)。
ただし、医療保険や年金の権利が維持されたまま給付金を受け取れる仕組みになっているため、長期休業に対する家計への影響は、仕組みを理解したうえで試算することをおすすめします。
支給要件(取得できる人の条件)
介護休業給付金を受け取るには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 雇用保険の一般被保険者であること
- 介護休業開始日前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12ヵ月以上あること
- 介護休業期間中に就業していた日数が10日以下(または80時間以下)であること
- 介護休業終了後に引き続き雇用される見込みがあること
期間雇用者(契約社員・パートなど)でも、上記要件を満たせば対象になる場合があります。詳細はお住まいの地域のハローワークにお問い合わせください。
申請の流れ
介護休業の申請手順
- 会社の人事・総務部門に相談する(就業規則と社内フローを確認)
- 介護休業申出書を提出する(原則として休業開始2週間前まで。書面・メールなど会社の指定方法で)
- 会社が「介護休業取扱通知書」を交付する(取得期間・給与の扱い等を明記)
- 休業中:雇用保険料・社会保険料の処理を会社が行う
- 休業終了後:会社経由でハローワークへ「介護休業給付金支給申請書」を提出する(事業主が代行するのが一般的)
- ハローワークが審査し、給付金が指定口座に振り込まれる
介護休暇の申請手順
介護休暇は取得の仕方が比較的シンプルです。
- 対象となる家族の介護が必要な状況が生じたら、会社に口頭または書面で申し出る(当日でも可)
- 会社から求められた場合は、対象家族との関係を示す書類(戸籍謄本など)を提出する
- 取得した日数・時間数を会社が管理する(年5日・10日の上限に注意)
介護休暇は当日の申し出も認められているため、急な介護の必要が生じた場合にも対応できます。ただし、会社のルールに応じた連絡方法(電話・メールなど)で速やかに連絡しましょう。
出典:厚生労働省「育児・介護休業法 ハンドブック(事業主向け)」
書類の準備について
介護休業給付金の申請にあたっては、会社が主体となってハローワークに提出する書類(「介護休業給付金支給申請書」「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」など)のほか、状況によっては申請者自身が対象家族の介護状態を証明する書類を求められることがあります。事前に会社の担当者や最寄りのハローワークへご確認ください。
制度を上手に組み合わせるポイント
介護離職を避けるために
厚生労働省の調査によると、介護を理由に離職した人の多くが「介護休業制度を知らなかった」「使えると思っていなかった」と答えています。制度を正しく理解し活用することが、介護離職を防ぐ第一歩です。
介護休業は、長期的な在宅介護の体制を整えたり、老人ホームや施設の選定・見学・入居手続きを進めたりするための「まとまった時間」として活用するケースが多いようです。一方、介護体制が安定した後の日常的な通院付き添いや急な対応には、介護休暇を活用するという流れが一般的です。
短時間勤務・フレックスも活用する
育児・介護休業法では、介護休業のほかに「所定労働時間の短縮等の措置」も事業主に義務づけています。フレックスタイム制の活用、始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ、テレワーク(在宅勤務)の導入など、職場によってさまざまな選択肢があります。
仕事と介護の両立に向けて、まずは会社の制度を確認しつつ、地域包括支援センターや社会保険労務士にも相談しながら、無理のない体制をつくることをおすすめします。
兄弟・家族での役割分担も大切
介護休業・介護休暇を取得できるのは、本人だけではありません。兄弟や配偶者がそれぞれの職場で取得できる場合もあります。家族みんなで「誰がどの制度を使うか」を話し合い、役割を分担することで、特定の人に負担が集中する状況を避けやすくなります。介護で兄弟と揉めない話し合い方の記事も参考にしてみてください。
まとめ
介護休業と介護休暇は、どちらも「育児・介護休業法」に基づく労働者の権利です。それぞれの特徴をまとめると、以下のようになります。
- 介護休業:通算93日・最大3分割・雇用保険から給付金(休業前賃金の67%相当)あり。介護体制の整備や施設選びなど、まとまった時間が必要な局面に活用。
- 介護休暇:年5日(2人以上で10日)・1日単位または時間単位で取得可・原則無給。通院付き添いや急な対応など、日常的な介護場面に対応。
- 給付金は「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」が目安。非課税で手取りへの影響が比較的少ない。
- 制度を組み合わせ、家族で役割分担しながら活用することが、介護離職を防ぐうえで重要です。
ご自身の勤務先における制度や手続きの詳細については、会社の人事・総務部門、またはお近くのハローワーク・都道府県労働局にご確認ください。具体的な給付金額の試算や申請書類の作成については、社会保険労務士にご相談いただくと、より確実に手続きを進めることができます。
よくある質問
介護休業は、有給休暇を使い切ってからでないと取れませんか?
いいえ、介護休業は有給休暇の残日数に関わらず取得できます。有給休暇と介護休業は別の制度です。ただし、介護休業期間中に有給休暇を充てることも労働者側の判断で可能です。詳しくは会社の担当部門にご確認ください。
パートタイム・契約社員でも介護休業給付金をもらえますか?
雇用保険に加入しており、「介護休業開始前2年間に被保険者期間が12ヵ月以上ある」などの要件を満たしていれば、雇用形態を問わず対象となる可能性があります。ただし要件を満たさない場合もあるため、お近くのハローワークにご確認いただくことをおすすめします。
介護休暇は、介護する家族が遠方にいる場合でも取れますか?
はい、同居・別居を問わず取得できます。「配偶者の父母」「祖父母」「兄弟姉妹」「孫」も対象家族に含まれます。遠方への移動や手続きの同行など、介護に必要な場面であれば取得できると考えられますが、会社の就業規則に基づく対応が必要です。
介護休業を取ると、職場復帰後にキャリアに影響しますか?
育児・介護休業法では、介護休業の取得を理由とした解雇・降格・減給などの不利益取り扱いは禁止されています。ただし実際の職場環境は会社によって異なります。制度上の権利として安心して活用でき、不当な扱いを受けた場合は都道府県労働局の「雇用環境・均等部(室)」へ相談できます。
介護休業の93日は、複数の家族をそれぞれ対象に取れますか?
はい、93日の上限は「対象家族1人につき」の日数です。たとえば、父と母がそれぞれ要介護状態になった場合、父のために93日・母のために93日と、対象家族ごとに取得できます。

